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第五章 開戦

王国歴十二年。

黒曜石の塔から現れた、謎の軍勢。

その数、数万。

斥候の報告は、誰もが信じたくない数字だった。

「エンダーマンの軍隊だと……。」

スターリンの顔が、初めて強張った。数々の戦いを乗り越えてきた男の顔が、それでも強張った。

「ただのエンダーマンじゃない。」

「統率されている。」

ピックバーグの声は、震えていた。

「エンダーマンは、本来、群れない種族だ。意志を持って、隊列を組んで、命令に従って動く。これは……。」

「これは?」

「軍隊だ。明確な、軍隊だ。」

王都 GOLDEN BASTION。

夜を徹して、緊急戦争会議が開かれた。

戦争大臣。元帥。王立参謀本部。

居並ぶ全員の顔に、疲労と緊張が滲んでいた。

「敵の正体は?」

オーレックスが尋ねる。

ピックバーグは、古文書を会議室の長机に広げた。羊皮紙の端が、灯りの中で揺れた。

「黒曜石帝国。」

「エンドの民が築いた古代文明です。」

「彼らは数千年前、ネザーとオーバーワールド、両方の世界を征服しかけました。」

「しかし。」

「ある日突然、姿を消した。」

「滅んだはずだったんだ。」

会議室は、静まり返った。

蝋燭の芯が、小さく爆ぜる音だけが聞こえた。

「そして今。」

「再び現れた。」

「奴らは、侵略を始めようとしている。」

誰も、口を開かなかった。

元帥が、ようやく声を出した。

「迎え撃つしかない、ということですな。」

「迎え撃つ。」

オーレックスは、繰り返した。

その言葉の重さを、確かめるように。

「僕たちは、平和を作るために旅をしてきた。」

「その平和を、守るためにも、戦わなければならない。」

王座についた時、彼は誓った。力で支配しない、と。

しかし。

守るための力と、支配するための力は、違う。

そう、自分に言い聞かせるしかなかった。


第六章 エンダーロード

数日後。

北方前線。

親衛軍と陸軍第一軍団は、敵と激突した。

最初の数分で、戦況は明らかになった。

「ぐわぁ!」

「強い!」

普通のエンダーマンとは、比べ物にならなかった。

転移する速度。

黒曜石の剣の重さと鋭さ。

そして、恐ろしいほどの冷静さ。

兵士の悲鳴が、次々と上がる。

「なんなんだこいつら!」

スターリンは大斧を振るい、目の前の敵を二体まとめて薙ぎ払った。だが、振り返るたびに、新しい敵が転移してくる。終わりが見えなかった。

その時。

戦場の空気が、変わった。

紫色の雷が、空を割った。

そして。

巨大な影が、地に降り立った。

身長三メートルを超える、巨人だった。

黒曜石の鎧が、まるで生きているように脈動していた。紫色のマントが、風もないはずのネザーの戦場で、不気味にはためいていた。

赤く輝く、二つの目。

兵士たちは、誰一人、動けなかった。恐怖が、足を縫い付けていた。

「我が名は。」

「ENDER LORD。」

「第四軍団司令官。」

「侵略者よ。」

「消え去れ。」

その声には、抑揚がほとんどなかった。だからこそ、余計に恐ろしかった。感情のない声で告げられる死刑宣告。それが、戦場に響いた。

兵士たちが、後退する。

「司令官だと……?」

スターリンが、低く呟いた。

「つまり。」

「まだ上がいるってことか。」

その言葉が、誰の心にも、重くのしかかった。


第七章 北方防衛戦

ENDER LORD率いる軍勢は、なおも北方要塞へ迫っていた。

「ここを突破されれば、王国領内だ!」

元帥が、地図を叩いて叫んだ。

「絶対に止める!」

オーレックスは、声を張った。

「国王陛下!」

侍従が、慌てて駆け寄った。

「前線は危険です!どうか、後方からの指揮を!」

しかし、オーレックスは微笑んだ。

それは、ずっと昔、路地裏で剣を抜いた時と、同じ微笑みだった。

「兵士たちだけに戦わせるわけにはいかない。」

「僕も行く。」

スターリンは笑った。あの、雷が転がるような豪快な笑い声。

「待ってました!」

「君がそう言うと思ったよ。」

ピックバーグも頷いた。

「作戦は、できてる。」

ノートを開く。かつて、村の橋を架けた時と同じ、緻密な図面が、そこに描かれていた。

「奴らは転移できる。」

「なら。」

「転移先を限定すればいい。」

指が、地図の上を滑る。

「玄武岩デルタだ。」

「狭い地形なら、包囲できる。橋頭堡を一点に絞れば、数の利を、こちらが活かせる。」

「天才。」

「君は黙って岩を運ぶ担当でいいよ。」

何年経っても、変わらない。

それが、不思議と、戦の前の不安を、少しだけ和らげた。


第八章 三人の英雄

玄武岩デルタ。

戦場は、すでに炎に包まれていた。

「突撃ぃ!」

スターリンが、敵陣へ真っ先に飛び込んだ。

「うおおおお!!」

巨大な斧が、唸りを上げて黒曜石兵を吹き飛ばす。一振りごとに、地響きが起きた。

一方。

ピックバーグは、後方の指揮台で旗を振った。

「第三連隊、前進!」

「砲兵隊、撃て!」

轟音。

地が揺れた。敵軍の隊列が、初めて崩れた。

そして。

最前線。

オーレックスは、黄金の剣を構えた。

剣身に、戦場の炎が反射していた。それは、遠い昔の夜、真紅の森を焼いた炎を、どこか思い出させた。

「これ以上。」

「誰も傷つけさせない!」

黄金の光が、剣から放たれた。一振りごとに、敵が次々となぎ倒されていく。

しかし。

その時。

空間が、裂けた。

「来たか。」

ENDER LORD。

「王よ。」

「貴様を滅ぼす。」

「そして。」

「エンド帝国は再び、世界を支配する。」

巨大な黒曜石の剣が、振り上げられる。

黄金の剣が、それを受ける。

激突。

ガァァン!!

衝撃波が、戦場全体を揺らした。兵士たちが、足を踏ん張ってもなお、後ろへ吹き飛ばされた。

「陛下!」

スターリンが叫ぶ。

「オーレックス!」

ピックバーグも叫ぶ。

だが。

ENDER LORDは、笑っていた。

「面白い。」

「だが。」

「これは序章に過ぎぬ。」

「我らには。」

「皇帝陛下がおられる。」

「皇帝……?」

オーレックスは、目を見開いた。

「まさか。」

「まだ上が……。」

ENDER LORDは、不気味に笑った。

「震えて待つがいい。」

「黄金王。」

「真の絶望を。」

そして。

紫色の光と共に、彼は姿を消した。

戦場に、静寂が訪れた。

戦いには、勝った。

しかし。

三人の顔に、笑顔はなかった。

「司令官であれかよ……。」

スターリンが、肩を落として呟いた。

ピックバーグの顔色は、青ざめていた。

「まずい。」

「本当にまずい。」

「もし、皇帝がいるなら……。」

オーレックスは、遠くの空を見つめた。

そこには。

巨大な紫色の月。

そして、さらに大きな、転移門。

「来る。」

「本当の戦いが。」

風のないネザーの空に、それでも何か冷たいものが、頬を撫でた気がした。

こうして。

黒曜石戦争は、新たな段階へ突入する。

そして、三人は、まだ知らなかった。

エンド帝国皇帝。

ENDER EMPEROR。

そして。

その背後に眠る、さらに恐るべき存在の存在を。

Long live the Piglin King!