第九章 最後の結晶
エンドの最果て。
漆黒の大地が、どこまでも広がっていた。
紫色の空。
そこに、まるで他のすべてを拒むように、最後のエンドクリスタルが、静かに浮かんでいた。
その下に立つ男。
第一竜将。
SHADOW。
「……。」
彼は、静かに大剣を下ろした。
「皇帝陛下。」
「申し訳ありません。」
「私は。」
「最後まで、間違え続けました。」
オーレックスは、剣を構えたまま、ゆっくりと近付いた。
怒りは、まだ消えていなかった。だが、それ以上に、何か別の感情が、彼の中にあった。
「SHADOW。」
「もう、戦う必要はない。」
「……。」
「終わらせよう。」
長い沈黙が、二人の間に落ちた。
やがて。
SHADOWは、微笑んだ。数千年ぶりに見せる、本物の笑みだった。
「黄金王。」
「あなたは。」
「陛下が信じた通りの人だ。」
彼は、最後の結晶を、見上げた。
「私の役目も。」
「終わりです。」
ガァァァン!!
自らの剣で。
最後のエンドクリスタルを、破壊した。
「なっ!?」
スターリンが、目を見開いた。
「お前……。」
「ありがとう。」
SHADOWは、そう言うと、静かに、その場に崩れ落ちた。
数千年の戦いが、ようやく、終わりを迎えようとしていた。
第十章 竜王
ゴォォォォォォ!!
七つの結晶を失った、エンダードラゴン。
その咆哮は、怒りと絶望に満ちていた。
『愚かな者ども!』
『我は永遠!!』
『我は終焉!!』
巨大なブレスが、大地を焼いた。
空間そのものを引き裂く翼が、紫色の空を切り裂いた。
世界連合軍は、総攻撃を開始した。
「撃てぇ!!」
砲撃。
矢。
魔法。
すべてが、竜王へ降り注いだ。
しかし。
倒れない。
「化け物か!」
スターリンが、叫んだ。
その時。
ピックバーグが、叫んだ。
「オーレックス!」
「今だ!」
「心臓だ!」
黄金王は、頷いた。
「行く!」
黄金の剣。
そして。
王の冠。
二つが、共鳴した。
黄金の光。
それは。
初めて冠を手にした、あの日と同じ光だった。
『力によって支配するな。』
『知恵によって導け。』
『民を守る者こそ、王となる。』
声が、頭の中に、確かに響いた。長い旅の果てで聞いた、あの声と、同じ声だった。
「うおおおおお!!」
ズドォォォン!!
黄金の剣は、エンダードラゴンの胸を、貫いた。
静寂。
そして。
巨大な身体は、無数の光となって、消えていった。
世界を包んでいた紫色の空が、ゆっくりと、晴れていった。
戦いは、終わった。
ついに。
本当に。
終わった。
第十一章 皇帝の国葬
エンド帝国。
王都。
数千万の民が、棺の前に集まっていた。
誰もが、涙を流していた。
棺の前に立つ、オーレックス。
「彼は。」
「偉大な王だった。」
「そして。」
「僕の友人だった。」
短い言葉だった。だが、それ以上の言葉は、見つからなかった。
スターリンは、静かに、帽子を取った。
ピックバーグも、涙をぬぐった。眼鏡の奥の目を、何度も。
そして。
SHADOW。
かつて第一竜将と呼ばれた男。
彼もまた、墓前に、花を供えた。
「陛下。」
「おやすみなさい。」
その短い言葉に、数千年分の後悔と、そして、ようやく訪れた安らぎが、込められていた。
その日。
PIGLIN KINGDOMとエンド帝国は、永遠の友好を誓った。
数千年の対立の歴史に、初めて、終止符が打たれた日だった。
終章
王国歴十四年。
黒曜石戦争。
そして。
エンダードラゴン戦争。
二つの大戦争を乗り越えた世界には、ようやく、本当の平和が訪れていた。
王都 GOLDEN BASTION。
市場には、笑顔が戻り。
子供たちは、戦争を知らずに走り回り。
兵士たちは、安心して眠れるようになった。
「平和ってのは。」
「退屈だな。」
スターリンは、笑った。
「いいことじゃないか。」
ピックバーグも、微笑んだ。
バルコニー。
夕焼け。
KING PIGLIN I。
Aurex Goldtuskは、穏やかな風を、頬に感じていた。
「これで。」
「ようやく。」
「普通の日々が、戻ってくる。」
彼は、まだ知らなかった。
この後、王宮の庭園で開かれる、ささやかなお茶会のことを。
王と兵士が入れ替わる、とんでもない一日のことを。
そして。
一人の少女との、運命の出会いのことを。
それらは、世界を揺るがす戦争などとは無縁の。
小さくて、少し不思議で、温かい物語。
英雄たちにも、穏やかな日々は訪れる。
そして。
新たな物語は、笑顔と紅茶の香りと共に、始まる。
PIGLIN KING
第三巻 エンダードラゴン戦争
完